菅野たくみの「花乙女の源流探訪」

「花と乙女に祝福を」(ensemble、2009。以下、はなおとと略す)は、主人公が女装少年のエロゲーを研究し尽くした、金字塔とも言える作品である。
そして、はなおとの源流として、強く流れを汲むと推定される作品が、以下の3つである。

・処女はお姉さまに恋してる(キャラメルBOX、2005)
・恋する乙女と守護の楯(AXL、2007)
・オト☆プリ~恋せよ!乙女王子様♪ドキドキウェディングベル~(しゃくなげ、2008)

というわけで、はなおとに影響を与えた最新であろう作品として、オト☆プリをプレイしてきました。

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以下、感想&考察メモ。

<雰囲気>
 序盤のまったりした雰囲気が最後まで継続するところは個人的に大好き。
 どのヒロインを選んでも、他のヒロインがサブヒロインとして効いてくる構成はおとボクと似て好きな構成。

<システム>
 Windowsユーザとしては非常に遊びやすい。
 ただ、不法コピー対策にDVD-ROMスロットが占拠されてて認証がうるさい&遅いのはもったいないと思う。
 あと、ウィンドウ非アクティブでゲーム進まなくなるのはいくない仕様だと思うんだ……

<主人公・大山瑠偉>
 生真面目だが、ひたすら流されやすい。
 女装少年ものエロゲの特徴である、ヒロイン主導+主人公成長型の主人公としてぴったりの性格。
 ピンポイントで見せる男らしさにしびれる。

<秋山美冬>
 幼なじみにして、頼れるお姉さま。個人的に本作一押し。
 一番最初にプレイして、問題抱えてるなぁ……と思ってたら実はヒロインの中で一番傷の浅いキャラだった。
 鈍感なボーイッシュ少女、かわええのぉ……。

<剣菱精華>
 こわれもの注意。つか、一家全部壊れてる。
 デレデレバカップルを堪能したい人にお勧め。おとボクの貴子シナリオをやり過ぎるとこうなる。

<三和琥珀>
 典型的な子供。だが、それゆえに館全体のムードメーカーともなり、スネーク蛇山さんが彼女を気に掛ける理由も解る。
 エンディングは必見。悩み考える時間のつらさと尊さ、人の温かさが身にしみて分かる。

<久保田千寿>
 本作一番の問題児。
 彼女のセクハラの意味が明かされたその瞬間から、ギャグキャラとしての振る舞いが痛々しくしか見えない。
 逃げ水の虚像を追いかけて、自らも虚像になろうとするその姿は、名曲「碧いうさぎ」の歌い手に通じる危うさを秘める。

<大友真希>
 シナリオ持ちキャラで唯一、掛け値なしの恋愛が楽しめるキャラ。
 ヤマもオチもイミもないため、他のヒロインが完全に傍観者というのが残念。
 恋愛は心が通じ合っていればそれでいい? ごもっとも。

<全体的に>
 家庭に問題抱えすぎだろこのヒロインたち(主人公を含む)。
 個人的には美冬が一押しなんだが、世間的には真希一択というのもよく分かる。
 あ、言い忘れてたけど、桂さんうざいっす……

<考察~おとボクからはなおとへ~>
 極端な形ではあるが、おとボクの「シナリオの型/受け型女装主人公の魅力」をほぼ忠実に再現しており、おとボクとはなおとの物語構造を明らかにするには絶好の題材。
 ただ、マクガフィンとしてぶっ飛んだ設定を用意しすぎたところが評価を落としている点は否めない。ゆったりとした時間の流れと、柔らかい雰囲気に包まれる感覚、所謂「蕩け(とろけ)」を表現するには性急に過ぎた。共通シナリオを雰囲気作りに使えばもっと良い作品になったのだろう、と思うと、後発であるはなおとが成功した理由も分かる。
 実のところ、発売時期を見るとオトプリが直接はなおとに影響を与えたとは考えられず、「間接的に影響を与えたライバル作品」としての見方をすべきなのであろう。

 もう1点、おとボクとオトプリ/はなおとの致命的差違について指摘する必要がある。
 それは、ゲーム内実時間の差である。
 おとボクはゲーム内で9ヶ月もの時間を過ごしていることから、主人公の成長をゆっくり描くことができる。が、通常のエロゲーはそれほどの時間的猶予をシナリオが与えてくれない。
 ゆえに、多少なりとも性急な印象を持ってしまうのは、もったいないことである。オトプリの場合、共通シナリオにアダルトシーン4人分を含むというシナリオ設計が性急な印象を強めているのは、残念と言わざるを得ないか。

<まとめ>
 瑠偉の流されやすすぎる性格に嫌悪感を抱くことがなければ、十分楽しめる作品。
 おすすめとまでは言わないが、良い時間を過ごさせて貰ったとは思う。

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