2007年5月28日 のアーカイブ

そんなあほな……

2007年5月28日 月曜日

知り合いのblogで見つけた記事を見て、一瞬恐ろしくなった。

毎日新聞よりコピペ。

<音楽保存サービス>ストレージ利用は著作権侵害 東京地裁
5月25日20時39分配信 毎日新聞

 インターネット上にデータを保存する「ストレージ」を利用し、ユーザーが自分のCDなどの音楽データを保存、いつでも携帯電話にダウンロードして聴けるサービスの提供が著作権侵害に当たるかどうかが争われた訴訟の判決で、東京地裁(高部真規子裁判長)は25日、著作権侵害に当たるとの判断を示した。
 問題のサービスは、情報通信会社「イメージシティ」(東京都台東区)が05年11月から始めた「MYUTA」。ユーザーは音楽データをパソコンから同社のサーバーに保存し、携帯電話へのダウンロードはユーザー本人しかできない。
 このサービスに対し、日本音楽著作権協会(JASRAC)は著作権侵害だと指摘。同社はサービスを中止したうえで、同協会を相手に著作権侵害に当たらないことの確認を求めて提訴していた。
 訴訟で同社は「実質的にデータ複製や送信をするのはユーザー自身。不特定多数への送信はしておらず、著作権は侵害しない」と主張したが、判決は「システムの中枢になるサーバーは同社が所有、管理しており、同社にとってユーザーは不特定の者。複製と公衆(不特定多数)への送信の行為主体は同社だ」と判断。協会の許諾を受けない限り、著作権を侵害すると認定した。【北村和巳】

高部真規子は一太郎ショックでもやってくれちゃったダメ裁判官なんで今更言うこともないんだが、それにしてもこの判決はお粗末に過ぎる。(参考までに、この裁判は高裁にてジャストシステムの逆転勝訴。)

この判決が出た根拠は、個人サイト「ナガブロ」さまが詳しく、わかりやすい。

んで、読んだ感想。
高部、裁判官やめて首吊ってこい。

高部の立場で詳細な解説を頂いたナガブロさまには申し訳ないが、ナガブロさまの記事を見ながら、高部の論理を一手ずつ崩していく。お手元に、著作権法のページをどうぞ。

キーポイントの1(複製権):サーバー上でのデータ複製は私的利用か否か

著作権法30条「私的使用のための複製」に関する例外・第1項
一 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合

……はい、「複製の機能」。ここテストに出ますよ(嘘)。
一般的に、ストレージサービスが単体で複製の機能を有することはありません。複製を行うのは、クライアントであるパソコンなりケータイが主であり、ストレージサービスはあくまで従に過ぎません。
例外として、バックアップあるいはレプリケーションのために、サーバーが複製の機能を有する場合がありますが、機器故障などの損害からアップロードされたデータを保証するためだけに行われることであり、外部アクセスからは厳重に保護されます。このため、著作権法上の『複製』にあたらないと判断するべきです。

キーポイントの2(公衆送信権):公衆送信って何よ?
著作権法第23条に違反している可能性についての議論なのだが、著作権法は公衆について以下のように定義している。

著作権法第2条第5項
この法律にいう「公衆」には、特定かつ多数の者を含むものとする。

……はい、「多数」。ここテス(ry
ストレージサービスですから、当然IDとパスワードによって、本人しか利用できない状況になるわけです。すなわち、多数の者は含まないわけですね、これ当然。

キーポイントの3(カラオケ法理):バイナリデータとは、業者が管理出来るものか否か

んで、この判決が出る根拠となった「カラオケ法理」。
Wikipediaにもあるとおり、(1)支配・管理性(2)利益の取得性の2点が挙げられるわけですが、この手のサービスの本質について、申し上げましょう。「支配すんの無理」。
ストレージサービスとはデータの保存スペースを提供するサービスであるため、データの中身をチェックした時点で、顧客についてのプライベートな情報を入手することになります。ローカルに入れておくと消えてしまう怖さのある住所録や、ケータイで恋人同士が見られるように「あん♪」な写真等をアップロードする用途だって考えて良いわけです。こんなデータが入っていることだけで、企業にとっては国家機密レベルの極秘情報。そんなデータを、『他者からアクセスできない』『確実に保全する』以外の管理を行おうとしたら、その時点でプライバシーを全力で侵すことになります。
カラオケ法理で言うレベルの支配性(テープなりデータ配信なりで楽曲を提供する)を、この判例が持ち得ないのは、技術者にとっては火を見るよりも明らかです。

さて、法律の素人が述べている程度のことですから、間違いは多々あるでしょう。ただ、技術者として、この判決に納得の行くコンピュータユーザが居て欲しくない、というのは、単なる個人のわがままなのでしょうか?