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ベーシック・インカム入門 無条件給付の基本所得を考える
山森亮、光文社新書、2009

おすすめ度:★★★★☆

☆6つあげるべきかどうか悩んだ末、内容が難しすぎる&記述に不足があるとして、☆4つに落とした。
読むだけで4時間くらい掛かってるし……(twitterやったりコミック1冊はさんでQKしてたけど)。

<概要>
「ベーシック・インカム」という社会保障の方法論がある。
これは、
・最低限生きていけるだけの所得を、すべての国民に無条件で配布する。単位は個人。
・税金は所得税みたいに、収入に対する単調増加関数として一律徴収するだけでいい。
・控除とか、そういう複雑なルール禁止。
として、真に平等な社会保障制度を実現する、という制度である。

本書は、歴史的な経緯を中心に、ベーシック・インカムの特徴と、ベーシック・インカムをとりまく状況を解説したものである。
特徴は以下の2点。

・ベーシック・インカムとは、「判断しない」ことを徹底した社会保障ルールである。
 社会保障を判断することはそれ自体が、生命の選択、差別の助長、「最低限の生活」の固定化、利権の発生を呼ぶ。

・ベーシック・インカムは、「働かざる者食うべからず」という思想を否定する。
 労働の質を、「働かざる者食うべからず」(生きるために働く)から、「衣食足りて礼節を知る」(幸せを求めて働く)に転化する。
 これにより、搾取の構造がなくなるため、労働の価値が自然と明らかになり、人間として正しい労働者生活を送ることができるようになる。また、会社としても無駄な労働力を雇う必要がなくなるのでありがたい。

<考察>
 ベーシック・インカム制度は、個人的に強く興味があったので、概要を理解する上では助けになった。
 ぱっと見た感じでは「ありえん」制度だと思うが、歴史的・専門的な観点から、ベーシック・インカムの考え方が「実はアリ」ということを丁寧に説明している。
 個人的には、「どうやって実現するの?」というほうに興味があったが、そっちのほうは「やれば何とかなるっしょ」くらいでざっと触れている程度。

 選挙前なんで投票の参考にしないで欲しいが、民主の政策(子ども手当とか、農家への直接補助金とか)を見ると、ベーシック・インカム構想への意欲を強く読み取ることができる。
 「ばらまいてる」とか「ばらまくふりして実はこっそり増税ktkr」とか、批判の声は探せばいくらでもあるが、そのどれもが的を射ないと感じているのは、私がベーシック・インカムという思想を知っていたからに他ならない。

 個人的に興味深かったのが、「判断しない」ことを正しいとする思想。「いる」「いらない」の判断をするとそれだけ効率的になるように見えるが、実は「判断すること自体が、高いコストとリスクを背負っている」というのは目から鱗が落ちるようだった。
 言われてみれば確かに、効率化を目指して判断ルーチンを入れると必ず、「微妙な判断」とか「変な判断」に悩まされることになる。

<twitter実況>
 今回、この本を読むに当たって、twitterで実況を行っていた(ID: elderalliance)。
 全体を一気に読んでぱっと理解できるような本じゃないので、1回で140文字しか打てない実況は、個人的な「中間まとめ」として非常に役に立った。
 以下、つぶやき示す。

# 喫茶店なう。本を一冊読むまで帰らないw
# ベーシックインカム入門1章、キーワードはワーキングプア。
# ベーシックインカム入門2章、キーワードは資力調査。あらゆる判断は差別の温床になる?
# ベーシックインカム入門3章、キーワードはダイバーシティ。障碍者とは、生きてるだけでユニバーサルデザインの価値創造をできる、選ばれた人々?
# ベーシックインカム入門コラム3、基本生活費+労働収入モデルvs必要経費モデルの考察。後者には悪い共産主義のにほひが、、、
# ベーシックインカム入門間奏。労働の質の観点から、4時間労働に賛成。ひきこもり続けることの最大の敵は退屈と孤独だから、全員ニートは考えづらいし。
# ベーシックインカム入門4章、キーワードは労働の価値。働かざるもの食うべからず、の思想は、しばしば権力者からの脅しに使われる。
# ベーシックインカム入門5章、キーワードは限界税率と技術革新。前者は平等な労働に対する特異点、後者は極端に高い生産性のもたらす社会的価値のバラダイムシフトを意味する。
# ベーシックインカム入門6章、キーワードは実践、自由の制限、雇用の柔軟性。道のりは長いが、社会のパラダイムシフトは少しずつ進んでいる。
# というわけで、ベーシックインカム入門(山森、光文社新書、2009)を読了。twitterで実況することで、難しい内容でも理解を深めることができたと思う。ブログとかチャットだと邪魔なだけなので、twitterならではの利点を見つけた気分。実はtsudaってるだけなんだが。

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コメント / トラックバック3件

  1. より:

    面白そうな本だからこれから探しにいってみる
    概要を聞く限りだと共産主義の派生と考えた方が近いのかな
    でも、資本主義否定というわけではなく、高度経済成長期の考え方にも近いのかなと
    とりあえず投票してから探してくるz

  2. 菅野たくみ より:

    ☆さん

    その視点は無かった<資本主義/共産主義
    言われてみれば、ベーシック・インカムは、資本主義を補完する意味合いでの共産主義なのかもしれない。

    ・「稼ぐ」という、資本主義の自己実現によって成り立つ = 資本主義に支えられている
    ・経営者が労働者を遠慮無く叩けるが、労働者も遠慮無く経営者から逃げられる = 資本主義を加速する

    といった感じで、「無職=生命の危機」という恫喝が消えることで、初めて本物の資本主義が実現するのだろうと思う。
    資本主義と共産主義が補完し合うなんて、考えれば考えるほど面白いシステムだわ……

  3. […] ベーシック・インカム云々な本の箸休めに読んだ。 自分内金字塔じゃないと☆3つあげられないんで評価が低く見えるけど、かなり面白かったです。 (良い感じと思った作品に、☆2 […]

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