CTRLキーからエロゲーを考える ―― do we need porno in hentai game?

 前章までは、性別と性役割のあり方についての視点からおとボクについて考えてきた。本章では、エロゲーの存在意義および価値の観点から、おとボクについて考えていく。
 あらかじめアウトラインを示すと、結論は「最近の人気エロゲーはまっとうな/理想的な恋愛を描くことが目的」であり、そのためのキーワードは「CTRLキー」である。
 もちろん、この考え方はすべてのエロゲーに通用するわけではない。しかし、通用するエロゲーがそれなりに存在することを示すことが本章の目的であり、この考え方が通用しない(おそらく大多数の?)エロゲーについては検討の対象外として論旨に影響ない。

5.2.0 用語定義
 エロゲー; 性描写を含むゲーム。ここでは、PCゲームに限定して考える。
 ギャルゲー; 女の子キャラクターと仲良くなることを目的としたゲームのうち、直接的な性描写を含まないゲーム。
 アダルトシーン; 性描写がなされる部分。

5.2.1 CTRLキーとは

 CTRLキーとは、PC用キーボードのキーの一つ。通常はCTRLキーを押しながら他のキーを押すことで、ソフトウェア特有の動作をするために用いられる(例:Windowsアプリケーションの大半においては、CTRL-Cでコピー、CTRL-Vで張り付けなど。これをコピペ(Copy and Paste)というw)。詳しくはWikipediaにて。
 しかしながら、エロゲーにおいて用いられるCTRLキーの操作は、上記の定義に当てはまらない。エロゲーにおいては、CTRLキーは独立キーとみなされ、もっぱら「シナリオ(テキスト・シーン等)のスキップ・早回し」に用いられる。この操作はほとんどのエロゲーに当てはまるデファクトスタンダードとして定着している。

 この用途は本来、
 ・日常生活などのパートをスキップして、早くアダルトシーンにたどり着く
 ・共通シナリオなど重複するシーンをスキップして、アダルトシーンのCGのコンプリート(完集)時間を削減する
 ためのツールとして開発されたと推測される。

 しかし、CTRLキーは、ユーザーによって新しい使い方を発見された。すなわち、エロゲーの「売り」であるアダルトシーンをスキップ・早回しする用途である。
 これは、別名「エロシーンスキップ」あるいは「Hシーンスキップ」などと呼ばれ(以下、エロシーンスキップで統一する)、エロゲーのプレイヤー間ではそれなりに認知されている使い方である。
 では、なぜそのような概念が発生したのだろう? そして、スキップされたアダルトシーンにはどのような意味があるのだろう?

5.2.2 エロゲーにおけるアダルトシーンの必要性について

 最近流行しているエロゲーについて考えてみると、そのほとんどが「一対一のまっとうな恋愛」を描いていることに気がつく(シチュエーションがまっとうかどうかは別として)。以下、各年度におけるベスト10を挙げてみる。(いずれも、テンプルナイツ~宮廷騎士団~より引用。ソースは2006年度までがPC NEWS(閉鎖)、2007/2008年度がTECH GIANとのこと)

 2008年
1. FORTUNE ARTERIAL(オーガスト)
2. ToHeart2 AnotherDays(Leaf)
3. リトルバスターズ!エクスタシー(Key)
4. 闘神都市III(アリスソフト)
5. 超昂閃忍ハルカ(アリスソフト)
6. つよきす2学期(きゃんでぃそふと)
7. プリンセスラバー!(Ricotta)
8. ティンクル☆くるせいだーす(Lillian)
9. タユタマ -kiss on my deity-(Lump of Sugar)
10 さくらシュトラッセ(ぱれっと)

 2007年
1. リトルバスターズ!(Key)
2. 君が主で執事が俺で(みなとそふと)
3. 恋姫†無双~ ドキッ★乙女だらけの三国志演義~(BaseSon)
4. 聖なるかな -The Spirit of Eternity Sword 2-(XUSE)
5. D.C.II Spring Celebration(CIRCUS)
6. 桃華月憚(ROOT)
7. あかね色に染まる坂(feng)
8. マブラヴALTERED FABLE(age)
9. HoneyComing(HOOK)
10 あねいも2~Second Stage~(bootUP!)

 2006年
1. 戦国ランス(アリスソフト)
2. マブラヴオルタネイティブ(age)
3. D.C.Ⅱ(Circus)
4. Really?Really!Limited Edition(Navel)
5. ef -the first tale.(minori)
6. Scarlett(ねこねこソフト)
7. Pia★キャロットへようこそ!! G.O.(カクテルソフト)
8. 妻しぼり(アリスソフト)
9. Circus Disk Christmas Days(Circus)
10 みにきす つよきすファンディスク(きゃんでぃそふと)

 2005年
1. Fate/hollow ataraxia (TYPE-MOON)
2. ToHeart2 XRATED(Leaf)
3. 夜明け前より瑠璃色な(オーガスト)
4. 智代アフター It’s a Wonderful Life(Key)
5. ぱすてるチャイムContinue(アリスソフト)
6. つよきす(きゃんでぃそふと)
7. SchoolDays(Overflow)
8. _Summer(HOOK)
9. Fate/stay night(TYPE-MOON)
10 はぴねす!(ういんどみる)

 2004年
1. Fate/stay night (TYPE-MOON)
2. CLANNAD(Key)
3. SHUFFLE!(Navel)
4. 下級生2(elf)
5. ラムネ(ねこねこソフト)
6. Canvas2 茜色のパレット(F&C FC01)
7. D.C.P.C. ダ・カーポ プラスコミュニケーション(Circus)
8. 君が望む永遠 special fandisk(age)
9. オーガストファンBOX(オーガスト)
10 RanceⅥ ゼス崩壊(アリスソフト)

 おとボクが2005年の20位にとどまっているところは個人的に納得いかない(笑)が、大人の事情ゆえ仕方ないとあきらめる。閑話休題。
 ここで、上記ランキングについて、以下の操作を実施する。

 操作:アダルトシーンが主な見所であろうと推測される作品を抽出
  (エロシーンスキップが差し支えなさそうだと独断と偏見にて判断したものを削除。知らない作品はページみて判断。判断不能な作品は括弧でくくっておく)

 2008年
4. 闘神都市III(アリスソフト)
5. 超昂閃忍ハルカ(アリスソフト)
 2007年
10 あねいも2~Second Stage~(bootUP!)
 2006年
(1. 戦国ランス(アリスソフト));Rance(抜きゲーRPG)見なしか、鬼畜王ランス(戦術SLG)見なしか。Ranceシリーズ自体がゲーム性メインの作品であるならば「RanceVI ゼス崩壊(2004)」とともに除外する必要あるが判断つかないため残す。
8. 妻しぼり(アリスソフト)
 2005年
(2. ToHeart2 XRATED(Leaf));TH2と見なすか、差分が重要と見なすか。
 2004年
10 RanceⅥ ゼス崩壊(アリスソフト)

 上記操作の結果、残ったソフト数は、5(7)/50となった。さらに、上からゲーム性に定評のある(すなわち、アダルトシーンも含め、すべてのシーンをCTRLスキップして問題ない可能性のある)アリスソフトを除くと、1(2)/50しか残らない。したがって、CTRLキーにエロシーンスキップの考え方を割り振って問題ないと推定される作品が、人気作品の9割近くを占めていることがわかる。
 注意として、To Heartのあかりシナリオ、おとボクの奏シナリオ等のように、シナリオに対してアダルトシーンが本質的な役割を果たす作品も存在する可能性あるが、この場合は「CTRLキーにエロシーンスキップの考え方を割り振って問題ないと推定され、実際のプレイを通して推定の誤りがわかる」と処理する。

 以上の考察から、エロシーンスキップの考え方に一定の有用性があることがわかった。データ操作の恣意性について、本稿の目的に有用性の定量的計測および全体適用可能性の証明は含まないことから、論旨の補強には影響ないと推定する。

5.2.3 エロゲーとギャルゲーの互換条件

 上記の論旨からエロシーンスキップに有用性を認めた場合、エロゲーとギャルゲーの差について、大きな疑問が残ることとなる。すなわち、「エロシーンスキップしたエロゲーはギャルゲーと何が違うのか?」という疑問である。
 エロシーンスキップの有用性を認めない場合、アダルトシーンが存在すればエロゲー、存在しなければギャルゲーと分類されることから、アダルトシーンの有無が本質的な差違であり、アダルトシーンの内容とその意味について着目していれば社会的考察として全く問題もなかった。
 しかし、アダルトシーン収集用のためのCTRLキーが存在する以上、エロシーンスキップは厳然として存在する概念であり、少なくとも一部のエロゲープレイヤーからは有用性を認められている概念である。
 それを裏付けるかのように、近年では人気の出ているアダルトゲームの多くが、追加要素とともにコンシューマーゲームに移植されている。コンシューマーゲームは風紀と教育の問題からアダルトシーンは強く規制されるため、このような移植が可能であることは、すなわち、アダルトシーンが作品の本質でない(少なくとも、制作側はそう考えている)ことが示される。
 これは、多くの場合、アダルトシーンを作品の本質に据えない限り、同様の精神的影響をもつ別のシーンに差し替えることが可能なためである。たとえば、恋愛上でのセックスシーンをキスシーンに、レイプシーンを傷害に変更する、などの操作を行う。逆に言えば、このような操作を実施できないゲームはアダルトシーンが作品の本質であり、コンシューマーゲームへの移植は事実上不可能であることを示している。
 例外として、Kanon名雪シナリオのように、単純に省略することで、セックスシーンの存在を暗示すること手法も存在するが、これについても「存在さえ明示できれば内容は省略可能」であることが言える。

5.2.4 まとめと考察:CTRLキーが予言し、経済が証明したパラダイムシフト
 ここでは、
・CTRLキーの使い方を観察することにより、アダルトシーンを本質としないエロゲーの存在可能性が示された
・実際、アダルトシーンを本質としないであろうゲームはそれなりに存在する
・アダルトシーンを本質としないエロゲーは、シナリオに対する多少の操作でコンシューマゲームに移植できる
 ことを述べた。

 おとボクは、2005年末にPS2に移植され、さらには2006年にアニメ化されていることから、アダルトシーンを本質としないゲームの一つとして、十分な証拠をもっているといえる。

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